この女、退屈につき-2
ホント、この姉どうにかしてほしい。
「さっきから言ってるでしょう。世界征服よ」
「あんたその意味分かってる? 世界ってのは広いんだよ。世界地図はカバンにおさまるけど、世界そのものはもっとでかいの。君はまだ、己の手がいかに小さき存在かを自覚してない…………」
「あ、あったあった」
「って無視かいっ!!」
華麗に俺の説得をかわしながら、姉は一つの店を見つける。
そこは、
「ここって…………ネットカフェ?」
だった。
「じゃ、さっそく行ってみよう〜」
俺はネットと世界征服がどう関係あるのか全く分からず、しかし戸惑いながらもついていく。
×××
んで、一時間後
「ご利用ありがとうございましたー」
従業員のそんな声を聞きながら、俺等は店を出た。
「結局何がしたかったの? 世界征服って言ってたけど、ただパソコンでグラフみたいなの見てただけじゃん。」
姉はそのグラフを見ながらしきりに指を動かしていたが、正直何やってんのか全然分からなかった。
だから俺は、別のパソコンを使って適当にどっかのサイトを見て楽しんでいた。
「下準備よ。世界征服は、結構時間がかかるからね……」
一時間で征服の下準備が終わるのか? と思うが、これ以上何か聞いても体力の無駄なので、スルーしておいた。
「じゃぁ次はどうすんの?」
「次はあれ」
そこは、
「…………ただの銀行……だよねぇ?」
だった。
「じゃ、行ってみよう〜」
この姉……マジで何がしたいんだ?
×××
「ご……五億円んん!?」
いい加減叫ぶの疲れたけど、それでも俺は叫ばずにはいられなかった。
俺等が手にしてんのは正真正銘の五億。しかも現金だから、二人で二億五千万ずつ分担で。
「姉ちゃん、ダメだよ! 何が駄目って、全てが駄目だよ!! 銀行強盗は犯罪だよ!? オレオレ詐欺も犯罪だよ!? これじゃぁ世界征服する前から極悪人じゃん!」
「そんなことするわけ無いでしょう。これは全部私のお金」
「学生がそんなに金貯めれるわけ無いじゃん!! これ学生の年収平均バイト量の千倍はあるよ!」
「ほれ証拠」
姉はおもむろに貯金通帳を見せる。
そこには、一時間前に五億円が振込まれ、五分前に引き出された確かな記録があった。
「姉ちゃん……あのネットカフェで何したの?」
「ん? 株取引。もう少し稼ごうかと思ったけど、まぁこれで足りるだろうからやめにしたの。晶人はもう少し欲しかった?」