秋風が彼氏の部屋に吹く頃に-10
長い間秘めていた欲望を叶えた後、私に残ったのは激しい後悔と罪の意識でした。光太郎くんを裏切ってしまったことへの後悔と罪の意識が私を苦しめていました。
タロウとセックスしたその日から、私は光太郎くんを避けるようになりました。
私はまともに光太郎くんと顔を合わせることが出来ません。何度もかかってくる光太郎くんからの携帯電話の着信音を聞きながら、私は後悔と罪の意識に沈んでいきました……。
私は光太郎くんの事が好きでした。初めて好きになった人でした。でも、私は欲望に負け、光太郎くんを裏切りました。
私は光太郎くんに自分のしてしまったことを告白することはできませんでした。かといって、後悔と罪の意識を隠したまま、光太郎くんと付き合い続けることもできない…。
私は欲望に負けた自分の愚かしさを呪いながら、ただ途方に暮れていました。
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「悪いな、美香。話だけでも聞かせて欲しいんだ。オレのこと嫌いになったのか?」
私が学校から帰ってくると、私の家の玄関前に光太郎くんがいました。
いつになく真剣な表情の光太郎くん、は呟くように、そう私に話しかけました。私はまともに光太郎くんの顔を見ることも出来ず、俯いたまま首を横に振りました。
「だったら、どうして…?」
胸の奥にあるモノが邪魔をして、私は光太郎くんになにも言えません。
「いいんだ、なんでも言ってくれよ?オレは大丈夫だからさ。もし、オレのことが嫌いになったんじゃないならさ、正直になんでも言ってくれよ。」
「……光ちゃん、私の部屋に来て…。」
私は精一杯絞り出すよう声で光太郎くんに言いました。光太郎くんは黙ったまま私の言葉に頷きました。
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私の部屋の隅、いつもの決まった場所に光太郎くんは座りました。私もいつもの、小さなテーブルを挟んだ、光太郎くんと向かい合わせになる場所に座りました。
しばらく、ふたりは黙ったままでした。
先に沈黙に耐えきれなかったのは、光太郎くんでした。
「あのさ、美香。タロウがさ、なんかおかしくなったんだわ。」
「えッ!?どういう…こと…?」
意外な言葉に私は驚き、思わず光太郎くんに理由を尋ねました。
「いや、ああ…しまったな…。美香はあんまりこの話、聞きたくなかったんだな…。」
「いいよ、聞かせて?」
私はやはりタロウのことが気にかかるようでした。目の前に光太郎くんがいるというのに…。
光太郎くんはしばし腕組みをして考え込んだあと、ゆっくりと話始めました。
「いやさ、タロウがさ、チャコに興奮しなくなったんだわ。獣医にも診せたんだが、異常はないしな。どうにもタロウの野郎、おかしくなっちまったみたいでよー。」
光太郎くんの言葉が私の胸に突き刺さりました。光太郎くんを裏切った上、タロウまでおかしくさせてしまった…。
「お、おい…、どうした……?」
私の目から涙が零れ出しました。罪の意識と後悔が交じった思いが私の心を押し潰そうとしていました。
「いやさ、別に、美香のせいってわけではないだろ…?」
「違う、私のせいなの!!」
胸の中で何かが弾けて、私は立ち上がりました。
「光ちゃん、見て欲しいの!!」
私はそう叫ぶと、着ていた服を脱ぎ捨て、裸になりました。そんな私を見て、光太郎くんは座ったまま、ポカンと口を開けています。
「お腹の引っ掻き傷を見て!あのね、光ちゃん、この傷、タロウとセックスしたとき出来た傷なの!私、ずっと前から犬とセックスしたかったの!それで、光ちゃんがいないとき、タロウとセックスしたの!」
そこまで言うと、胸につかえていた思いがすべて無くなりました。同時に、涙がこみ上げてきました。私の声は涙混じりのモノになり、しゃくり上げるような声のまま、相変わらずポカンとしたままの光太郎くんにはなし続けました。
「ごめんね、光ちゃん、私、変態なの!でも、これだけは言わせて、私ね、光ちゃんのこと大好きなんだよ!でもね、私、犬とセックスした変態だから…。ごめんね、光ちゃん…。こんな変態な私と付き合うことになって…。本当にごめんね……。」