あの時のアレ 〜side久留米〜-1
……読まなきゃよかった。
オレはベッドにダイブして、茂から借りた漫画を部屋の隅に放り投げた。
あの野郎、次会ったら殴ってやる。
オレは漫画を投げ出した辺りを一睨みしてから、枕に顔をうずめた。
茂が“すんげー面白れえから見てみろ”と言って、貸してくれた漫画――望月峯太郎の『座敷女』を読んで、心の底から後悔した。
ホラーと知らず読んだその漫画は、何とも後味の悪い、ジワジワくる怖さがいつまでもべったり肌に張り付くような不快感の残る漫画だった。
あらすじはこうだ。
主人公の大学生の男が住むアパートの隣に、女が訪ねてきた。
隣人は留守なのに何度もインターホンを鳴らす女が気になった男はついつい玄関のドアを開け、様子をうかがってしまう。
それが主人公と座敷女の始まりだった。
女は隣人とコンタクトを取りたいと、主人公に協力を仰ぐうちに、女はいつの間にか主人公につきまとうようになる。
人間離れした不気味な手口で、主人公のストーカーぶりを発揮する女。
勝手に合い鍵を作られ、主人公といい感じになっていた女子高生に危害を加られ、怒り心頭になった主人公は女と揉み合ううちについにはアパートまで火を点けられてしまう。
炎から逃れる際に負った怪我で病院に入院させられる主人公だが、そこでも女の影に怯えてしまい、なんとか抜け出そうとするが、女に見つかってしまい、変な注射を打たれてしまう……というものだ。