あの時のアレ 〜side久留米〜-9
「ホント、アイツって最低。
普通ここまでする?」
芽衣子は涙をこらえるためなのか、わざと怒りを露わにして履いていたショートパンツの裾をグイッと捲り上げて太ももを出した。
そこに見えたのは白い太ももに残るあざ。
こんな跡がついてるなんて、アイツはどれくらい本気で芽衣子に手を上げてんだ……?
いつの間にかオレは奥歯をギリッと噛み締めていた。
芽衣子はそんなオレの険しい顔を見てからさらに話を続けた。
「久留米くん、こっちの方がもっとひどいんだよ!」
芽衣子はそう言ってTシャツの裾を握りしめると一気にそれを脱ぎ出した。
ハッと我に返ったオレは慌てて、
「バ、バカ! 脱がなくてもいいだろ!」
と脱ぎ捨てられた彼女のTシャツを拾って渡そうとした。
上半身は赤いブラだけの悩ましい格好になった芽衣子から、慌てて目を逸らそうとしたが、不意に彼女の脇腹にあった青あざが目に入った。
結構大きな青あざは、恐らく芽衣子を蹴り上げたものだろう。
大人の男に蹴られるなんざ、痛くて怖くてたまらないだろうに。
茂が芽衣子に手を上げる様子がありありと想像できた。