あの時のアレ 〜side久留米〜-7
「やだ! あんな奴のとこになんか帰らない!」
茂という言葉に過剰反応した芽衣子は、苛立ちをビールと一緒に流し込んでいるように見えた。
「おい、一気飲みなんてバカな飲み方すんな」
しかし、時すでに遅し。
芽衣子は少し赤くなった顔でさらに素早く二本目のビールを開けた。
その後も、何度か芽衣子に帰るように説得したが、説得すればするほど彼女は頑として帰らないと言い張っていた。
そうこうするうちに、最終電車が出発する時間が過ぎてしまい、オレは深いため息を吐いた。
……この状況はやっぱりダメだ。
何もしなくとも、芽衣子と二人きりで一夜を過ごしたなんて、とても茂には言えない。
後ろめたい気持ちを奴には持ちたくなかったので、オレはむっくり立ち上がってある考えを芽衣子に言った。
「……芽衣子、あのな。オレ、仕事残っててさ。
お前が寝てる横でカチャカチャうるさくしてしまうだろうから、ちょっと漫画喫茶行って仕事片付けてくるわ。
お前は勝手にベッドで寝てていいからな」
もちろん仕事が残ってるなんて大嘘だ。
でも、そうでもしないとオレは多分理性を保っていられない。
そう思いながら、肩が大きく空いたTシャツと、短めのショートパンツというラフな格好に身を包んだ芽衣子をチラリと見やった。