あの時のアレ 〜side久留米〜-4
何で居留守決め込んでいるのに退かねえんだよ。
タオルケットの隙間からちらっと顔を出して、その理由がわかった。
この漫画を読んですっかり怖くなったオレは、部屋だけじゃなく、玄関やキッチン、トイレや風呂などあらゆる所の電気を点けていたのだ。
だから、ドアスコープから漏れる光で、ここにオレがいることがバレているのだろう。
ドアをドンドン叩かれ、ピンポンと連打されるうちに、恐怖で思考回路がイカレてしまったオレは、タオルケットにくるまったまま玄関に歩いていき、
「オレはあなたの力にはなれません!
どうかお引き取り下さい!」
と、ドア越しに叫んだ。
霊感があるらしいオレの母親曰わく、幽霊が寄ってきても知らん顔が一番らしい。
自分が何もできないことをアピールすると、幽霊も諦めて退散することが多いのだ。
玄関先の相手の正体が、人間なのか幽霊なのか、はたまた『座敷女』のような得体の知れないものなのかはわからないままだけれど、とにかく何もできないことを精一杯伝えるしかなかった。
そして、それが功を奏したのか、ドアを叩く音がピタリと止んだ。