あの時のアレ 〜side久留米〜-3
ピンポーン……。
突然鳴り出したインターホンの音に思わず、
「ギャアッ」
と悲鳴を上げてしまった。
壁に掛けられた時計はもう11時半を過ぎている。
こんな夜中に誰が訪ねてくるんだよ……。
咄嗟に浮かぶのは、座敷女の笑った顔。
いや、あれは漫画の話なんだから。
そう言い聞かせながらも、想像はどんどん悪い方へ膨らんでいく。
跳ね上がる心臓、ジワリと滲んでくる汗。
なんとか玄関の向こうにいる得体のしれない相手に気配を悟られないよう息を潜めた。
それでももう一度インターホンが鳴る。
反応したらダメだ。
『座敷女』の主人公は顔を合わせてしまったがために、ひどい目にあったのだから。
さっきから鳥肌が立ちまくっているオレはタオルケットにくるまってひたすら相手が退いてくれることを祈っていた。
だがしかし。
今度はドンドンとドアが叩かれ始め、その音に大げさ過ぎるほど、身体がビクッと震えてしまった。