あの時のアレ 〜side久留米〜-2
最後に女に見つかってしまった時の、女の口が裂けんばかりに笑った表情がとにかく怖くて怖くて、未だに目に焼き付いて離れない。
漫画を貸してくれた茂の、
「途中までは怖いけど最後はどんでん返しのハッピーエンドでスカッとするんだ」
と言う言葉を信じて律儀に最後まで読んだのだが、見事に騙された。
ハッピーエンドじゃなく、残るのは読まなきゃよかったという後悔だけ。
アイツはオレが怖い話を苦手なのを知っていて、わざとこれを貸してきたのだ。
しかも、主人公はオレと同じく一人暮らししてるからやけにリアルに感じるし、漫画の話とはいえ、背中がさっきから寒い。
風呂を済ませたのだけは幸いだった。
もしこれを読んだ後だったら、風呂なんて怖くて入れない。
一晩寝たらなんとかこの話も忘れているだろうと思いながら、薄手のタオルケットで身体を包み、さっきから脳裏にチラつく座敷女の最後に笑った顔をなんとか払拭すべく、キツく目を閉じたその時だった。