あの時のアレ 〜side久留米〜-18
オレの言葉に、芽衣子はビクッと身体を震わせた。
「オレ達、つい魔が差してしまっただけだろう?
だって、なんだかんだ言ったってお前は茂が好きなんだもんな」
誘導尋問のように問いかけて、ここで芽衣子の反応を伺ってみる。
万に一つでも、首を横に振ったり否定するような言葉を言ってくれたなら、すぐさま自分の想いを伝えるつもりであった。
しかし、どんでん返しは起こらなかった。
芽衣子は涙をポロリと零し、頷くだけ。
ああ、やっぱり芽衣子の心の中には入れなかったか。
自然に大きなため息が漏れた。
また、よき友人を演じなくてはいけないのか……。
しばらく目を閉じていたオレはやがてパチッと目を開けた。
「芽衣子、もう自分を責めるな。
オレさ、前の彼女と別れてしばらく経つから、最近欲求不満だったんだ。
そこにちょうどよくお前が来たもんだから、ついついそそのかしてしまったんだよ。
多分、お前じゃなくて他の女が来てもおんなじことしてたと思う。
だから、オレが言うのも変だけどもう気にしないでくれ。
お前さえ気にしないなら、夕べのことは無かったことにできるから」
そう言ってオレは、意地悪っぽい笑みを芽衣子に見せた。