あの時のアレ 〜side久留米〜-14
ろくに煙草を吸わないまま火を消して部屋に戻る。
芽衣子は熟睡しているらしく、口を半開きにしてどことなく間抜けな寝顔になっていた。
数時間前の艶めかしい彼女の姿とはえらい違いだ。
無防備な寝顔にまたそっとキスをしたら、彼女は目をつぶったまま眉をひそめて“うぅ……”とうざったそうに唸っていた。
やっぱり茂以外は嫌なんだろうな。
オレは小さく笑ってから、床のあちこちに散らばった芽衣子の服や下着を拾い上げ、寝ている彼女の足元にそれを置いた。
芽衣子が素面に戻った状態で目を覚まし、オレの部屋で裸で眠ってしまったことに気付いたらどんな反応するだろう。
それを想像すると傷つくことが怖くなってしまったが、それだけのことをしてしまったのだから覚悟しなければなるまい。
芽衣子が夕べのことに対してどうしたいかはわからないけど、彼女が出す決断に合わせてやるのが一番いいだろう。
オレは時計をチラッと見てから、冷蔵庫の前に歩いて行って扉を開けた。
少し早いけど、朝飯でも作ってやるか。
そう思い、卵を3つばかり取り出して、キッチンの前に立った。