あの時のアレ 〜side久留米〜-11
芽衣子はキョトンとした顔をこちらに向けたが、みるみるうちに悪巧みを思いついたような顔つきになっていった。
「そっか! あたしが浮気しちゃえば、アイツもあたしの気持ちわかってくれるかも」
「だろ? 浮気なんてされてみないとどれだけひどいことなのか気付かねえと思うぜ」
「でもあたし、そんな浮気するような相手いないからなあ」
眉をひそめてじっと考え込む芽衣子を見て、苦笑いが漏れる。
完全にオレは眼中にナシか。
酔っ払っているとはいえ、こんな下着姿を恥ずかしくもなく晒せるのなら、オレを男として見てないのだろう。
茂にもムカつくが、ここまで無神経な芽衣子にも少し苛立った。
少しはオレのことを、男として意識しろ。
気付いたらオレは、冷蔵庫の前で缶ビールを取り出そうとしている芽衣子に強引にキスをしていた。
芽衣子は手元が滑ってしまったたのか、缶ビールをゴトリと落とした。
鈍い音を立てて落ちた缶ビールは、ゴロゴロ床を転がっていく。
目をまん丸くしたまま固まっている彼女に向かって、
「オレでいいじゃん」
と、ニヤリと笑った。
自分がされた状況に気付いたのか、ほんのり芽衣子の赤い顔がさらに色味を増してきた。
「ダ、ダメだよ……。
久留米くんは茂と友だ……」
芽衣子の拒む言葉を塞ぐように、また唇を重ね、舌を絡ませる。
微かにビールの苦味が口の中に広がった。
こんな夜更けに男の部屋にやってきて、酔っ払って服脱いで、今さらダメはねえだろう。
オレは苛立ちをぶつけるように、芽衣子の頭を抑えつけながらしばらく貪るようなキスをした。