金髪女-10
「……沙夜子さん! 沙夜子姉さん! しっかりして!」
やがてうっすらと細目を開けた沙夜子は、思い切り気をやった余韻を色濃く残したまま、真奈美に向かって微笑みを返した。
「あ、ありがとう真奈美ちゃん。最後まで見届けてくれて。あたしもデーンも、とっても満足よ」
「沙夜子姉さん、一時はどうなっちゃうかと思って心配したよぉ」
真奈美は顔面をくしゃくしゃに泣きはらして、無理矢理笑みを作って答えた。
「うふふ、ありがとう、心配してくれて。でも大丈夫、これも一つの愛の形。狂おしいほどにお互い愛し合い、快楽を与え合うためのプロセスなの」
「プロセス? 何だか、よく分からないけど……でも、愛し合うのってなんだか面倒で大変……」
深刻に考え込んでしまった真奈美を、沙夜子は優しく抱き寄せると彼女の唇にそっと口づけをした。そして耳元で囁くように真奈美をなだめた。
「そんな事無いのよ、真奈美ちゃん。あなたは愛を知らないだけ。まだ愛された事が無いのね、可哀想に……」
「さっ、沙夜子姉さん、あのっ」
いきなり女同士で抱き合い、接吻されたショックで再び思考停止に陥ってしまった真奈美に、沙夜子は躊躇無く愛撫を始めた。
彼女は真奈美の腰に腕を回すと、着ていたワンピースの裾をたぐり寄せ、スルスルと脱がせにかかる。
真奈美の腕を上に持ち上げ、そのまま首からスッポリと引き抜いてしまった。
思った通り、下にはショーツ以外、何も下着を着けていない。ブラジャーもまだ着ける必要も無いくらい幼い胸が露わになった。
続けてショーツに手を伸ばした沙夜子だったが、さすがに真奈美の必死の抵抗に一旦退く事にした。
「ちょっと! やめてください! あたし、そんな趣味無いの!」
無理矢理沙夜子の腕を振り払おうとした真奈美だったが、いつの間に何処から取り出したのか、赤い首輪を握った沙夜子の手が真奈美の首に伸びた。
ガチャリ……それは一瞬の出来事だった。その首輪は一旦締まると、まるで手錠のようにしっかりとロックされ、もう真奈美の腕力では到底外せそうも無かった。
「あっ! 何するの……取れない!」
真奈美は焦って首輪と喉の隙間に指を突っ込んで引きちぎろうとしてみたが、喉が締め付けられ息が苦しくなり、逆に自分の指がちぎれそうになった。
その痛みで我に返った真奈美は、その手のひらに、首輪から別の物が延びている事に気が付いた。
冷たく固い連続した輪っかのようなもの……手繰ってみると、じゃらりと無機質的な音がした。目で見て、それが金属の鎖であることが分かった。
そしてその鎖の先には、やはり赤い首輪で繋がれた一匹の獣が、いつの間にか真奈美の前に立っていた。
真奈美は、何が起こったのかとっさに判断できず、ぽかんと口を開けて呆けたまま、しばらく沈黙が流れた。
認めたくない事実、逃避したい現実。
しかし赤い首輪と鈍く光る金属の鎖。その先端は、間違いなく真奈美と、もう一方には厳めしい黒獣を繋ぎ止めている。
真っ黒で贅肉のそげた筋肉質の流線型を描くその精悍な姿形は、まぎれもなくこの前沙夜子と繋がっていた、彼女がベルと呼ぶドーベルマンだ。
「いっ、いや……いやああああーっ!」
首輪の鎖をじゃらじゃら響かせ、真奈美は後ずさりしながら絶叫した。
これから自分の身に起こる不幸が一瞬頭をよぎり、真奈美はすっかりパニックになっていた。
「うふふっ……さあ、これで二人は運命の赤い首輪で繋がったわ。ベル、待たせたわね。思いっきり楽しんで良いのよ! さあ、真奈美ちゃんも観念して、おとなしく犯られなさい」
そう言って沙夜子がベルの背中をぽんと叩くと、彼は待ってましたとばかりに少女に飛びかかった。
「いやーっ、ぎゃあああああ」
真奈美は身をこわばらせて、断末魔のような金切り声を上げた。
目を涙で潤ませながら、恐怖に震えながら必死に抵抗を試みる真奈美の悲壮な姿など一向にお構いなく、ドーベルマンは彼女の上に覆い被さった。
すでに半立ち状態になった彼の股間の突起物が、ビュクンビュクンと脈打ち跳ね上がる様が、彼女の両の脚の合間から覗いて見える。
犬にのし掛かられ、上向きに地面へ転がされた真奈美は、必死に手足をばたつかせて抵抗を試みる。
しかし、鋼のように固くしなやかなドーベルマンの体は、彼女の腕の突っ張りや足蹴りをものともしない。
彼は泣き叫ぶ真奈美のうなじに噛みつくと、ぐいと捻るように地面へねじ伏せた。
「お待ち! ベル! 今、この娘をおとなしくさせるわね」
沙夜子は、真奈美の二の腕を掴むと、素早く何かを突き立てた。
「真奈美ちゃん、ちょっとチクッとするけど、すぐ楽になるわよ」
ドーベルマンに首を咥えられ、地面にうつ伏せ状態で押さえつけられ、身動きできない真奈美は、意図も簡単に二の腕へ注射器を打たれてしまった。