献花―けんか―-4
笑顔で別れて間もなく、紗耶香と島袋による二人三脚の日々がはじまった。
もちろん、夫には見せたことのない妻の顔をして、それは下着をつけないことだったり、介護から逸脱したスキンシップだったりする。
彼が食事をする前には必ず、箸をこっそり膣にくぐらせて愛液を絡ませたあと、その味を堪能する島袋の顔を眺めたりもしていた。
およそ治療とは呼べないその行為は、儀式と言ったほうがいいのかもしれない。
そんなことで彼の記憶が戻るとはとても思えないが、紗耶香にはその方法しか思い浮かばなかった。
「私、こう見えても人妻なんです」
会話の途中でそんな台詞を言ってみたとき、島袋の目が泳ぐのを紗耶香は見た。
「夫婦の営みもほとんどなくて、だから私、つい……」
「一人で満たしているのですか?」
島袋が手を握ってくるので、紗耶香は突き放すようにして顔を背けた。
「恥ずかしくて言えません……」
「満たされたくて我慢できないのですね?」
「やめましょう、こんな話……」
島袋の手に握力が込もっていく。
「野村さん、入浴の世話をあなたにお願いしたい。よろしいですかな?」
それはかつての島袋慶次が宿ったような言葉に聞こえた。
紗耶香のほうはすぐには了承しないつもりでいる。自分のことを高嶺の花だと思わせるためだ。
けれども浴室で島袋の下半身をうかがった途端、紗耶香は彼のそこに執着してすぐにまたがった。
「これっきりですよ……ああ……中に……あなたがいる……ああん」
できるだけ島袋の負担にならないよう、紗耶香のほうが腰を揺すって快感へと導いてやる。
「あなたのような若い女性が……ああ……夢のようだ」
乳房に手を伸ばしてくる島袋の肉体に肌を密着させる紗耶香。
ボディーソープの泡にまみれてぬるつく股間は、コケティッシュな音をたてて交わりを長引かせていく。
「二人だけの……ううっ……秘密ですよ……うふんっ」
「もちろんだとも、もちろんだとも……」
紗耶香の姿勢は自転車にまたがるのとおなじ恰好だ。自制心はない。
まったりと腰をまわして膣壁でペニスを洗っていく。島袋も我を忘れて紗耶香の腰を支えながら突き進む。