授受―じゅじゅ―-9
思わず指をしゃぶって、うっとりと首をかたむける若妻。視線の先でうごめくものが魅力的に見えるのは、今の夫婦生活にマンネリを感じているからだろうか。
それにしてもまだ結婚して間もない紗耶香である。一人遊びをするほど欲求不満でもない。
だけど私は、このバイブでオナニーがしたい──。
紗耶香のこめかみが興奮でぴくりと脈打った。唇はピンク色の輪をつくって開き、生理にしたがってバイブを脚に這わせていく。
見知らぬ男が迫ってくる感じ、秘密が生まれる感じ、そして体に火がつく感じがする。
くすぐったい──。
ショートパンツの奥に隠された肌がわなわなと震えている。
もっと上にきて──。
自らバイブを操って、股間をのぞき込みながら敏感な部分を舐めるようにもてあそぶ。
「そう、そこ、もっとして、気持ちよくして……」
カットソーからブラジャーをのぞかせると、胸にある二つの島をぽろりとこぼした。さらに先端の粒を指で摘まんで、人妻ゆえの色気を溢れさせて身悶える。
「ちょうだい、それが欲しい……」
ショートパンツが膝まで下りて、穿きなおしたばかりのショーツも途中まで下ろされる。
バイブとラビアを馴染ませるようにこすり合わせながら、徐々に開いていく膣口から愛液を誘い出す。
「濡れてるから、もうじゅうぶんだから、バイブで私を叱って……」
自分が不利になる最悪の状況を妄想しながら、紗耶香は譲ってもらったバイブを私物のように握りしめ、指で開いたヴァギナにゆっくりとおさめていった。
「は……う……あ……ああ」
この挿入が紗耶香を狂わせた。ずぶずぶと押し入ってくるシリコンのかたまりは、紗耶香の泉をどこまでも貫いていく。
もはや立っていることもできない。女の水脈から湧き出る粘液を内股につたわせて、はふはふと息をしながら床を這う。
あられもない姿で自慰にのめり込んでいく紗耶香。けっして欲張ったりはしない。
快感の幅、オーガズムまでの猶予、いろんなことに気を配ってゆるやかに上り詰めていく。
しかし、やっていることは異物をヴァギナに突っ込む行為である。よだれは出るし、声はしゃくれるし、汗でメークが落ちて、漏らした体液の後始末だってある。
「それでもいい……あん、イかせて、イかせてえ……ああ」
紗耶香は後先も考えずにバイブを出し入れした。経験は少なくとも、島袋から受けた凌辱の数々を思い起こすと、自分の性感帯がどこにあるのかがよくわかる。
「いや、イっちゃう、ああ、ひとりで、イクう、イクイク、あっ……」
絶頂に達する直前のぎりぎりのところで、紗耶香はバイブを引き抜いた。
「……ああっ……はあ……んん」
クリトリスに触れれば今すぐにでもアクメに逝けるだろう。しかし紗耶香はとどまった。
島袋の情熱がバイブに宿っているような気がして、夫婦の部屋で果てることに抵抗があったのかもしれない。夫への謝罪の意味もあるのだろうと思う。
こんなにもオナニーがしたいのに、あきらめなきゃいけないなんて──。
人妻とはつくづく我慢の多い肩書きなんだなと紗耶香は思った。そうしていつかこだわりを捨てる日が来たとき、男と女の永遠のテーマを突きつけられることになるのだろう。