姦通―かんつう―-8
「そろそろか?あぶないか?奥さん?」
「あ、あ、あ、ああっ、うん、あっあっあっ、いやあああ……」
「イクときはちゃんと言いなさい」
そこだけは首を振って拒否する紗耶香。だんだん体温が感じられなくなってくる。しかし島袋の指だけは感じる。
夫との営みではけっして得られない荒々しい快感が、乳首とクリトリスをじくじくと起たせて、膣は悲しいほどに島袋を欲していた。
こんなのはじめて、もうイっちゃう、中がすごいよお、ああイクう、イクう、もっとお、もっと入れてえ、おねがい、イかせてえ──。
「あんっ!」
M字にひらいていた脚がX字に絡まり、
「うんっ!」
硬直した手足を放置して、
「んっうん……んっ……ん……」
恍惚の表情を浮かべながら痙攣に自由を奪われる。
びくんびくんと躍る汗ばんだ肌の下に、アクメによってつくられたフェロモンを感じる島袋。
「奥さんのイクところ、ちゃんと見たからね」
紗耶香の性器から指を引き抜くと、白濁した露が中からぽたぽたと滴って、島袋はそれをうまそうに舐めた。
充血した小陰唇がびらびらとはみ出している。紗耶香はまだ恍惚の中である。
そのとき、パシャッとフラッシュが焚かれて、島袋がおそろしい台詞を言った。
「奥さんの恥ずかしい写真、記念に撮らせてもらったよ」
紗耶香が頭を持ち上げると、携帯電話を構えたままの島袋の姿があった。
「どうして……」
紗耶香は胸と陰部を両手で隠しながら、恨めしい思いでつぶやいた。
「この歳になると物忘れが多くてね。老後のために、奥さんと二人で時間を過ごしたという思い出が欲しいのだよ」
紗耶香は何も言い返せなかった。心を許したわけでもない男の愛撫にエクスタシーを感じたという事実が、排卵痛のように下腹部を憂鬱にさせていたからだ。
ぐすん、と涙をもよおすけれど、全身から興奮が消えることはなかった。
羞恥に染まったその顔を、ふたたび画像に取り込んだ島袋は、優越に浸った赤ら顔で紗耶香の体に重なりに行く。
「いや……いや……いや……」
レースのカーテン越しに日差しを浴びる広いリビングで、まばゆく発光する人妻の裸体。
「奥さんのその上品な体は、今だけ私のものだ」
それこそ空き巣に入った男が目当ての貴金属に群がるように、島袋は紗耶香の肉体に抱きついてあごをしゃぶった。
「ひんぐっ、んんっ、や、だっ……」
顔中を這いまわった舌が全身をたどるように舐め尽くして、さらにオーバーぎみな愛撫で乳首とクリトリスをもてあそぶ。
「こんなに濡らされたら、私の手には負えないなあ」
「やん、あっ、もう、だめです、ああん……」
「甘えた声がそそるねえ」
紗耶香は陰部に男の気配を感じた。