姦通―かんつう―-5
「私にはもったいないよ。奥さんみたいな人はもったいない」
わけのわからない独り言をつぶやきながら、島袋は紗耶香の乳首に吸いついた。
「んっ……」
紗耶香は目と口とを同時に閉じた。島袋に舐められている部分がじんじんと痺れてきて、人の妻らしく我慢しようとすればするほど、屈折した思いがふくらんでいく。
「あっ、うんっ……」
紗耶香はとうとう卑猥な声を漏らしてしまった。直後に首を振って取り消そうとしたけれど、島袋が聞いていないわけがないと思い、大人しくあきらめることにした。
「今の声が、奥さんのほんとうの声というわけだね?」
「違います……」
このまま消えてしまいたいと紗耶香は思った。そこへふたたび島袋の口による愛撫がはじまって、紗耶香もまた大人の反応を露わにせざるをえなくなる。
「あっ、ふっ、そこ、しちゃだめ……」
島袋がSの行為を浴びせてくるたびに、紗耶香の口からはMの声色が溢れてくるのだ。
「だめだと言う割には、いい具合に感じてるじゃないか」
ちゃぷちゃぷ、ぐちゅぐちゅ──唾液と乳首とがまみれるいやらしい音がしている。
今までの平穏な新婚生活が、その音によって蝕まれていくような気がして、紗耶香の涙腺がまた泣く準備をはじめる。
「ああっ、私っ、あん、だめっ……」
野村家の嫁が思った以上に敏感な肌の持ち主だったため、島袋は自分の思いどおりに乳房を揉んで、乳首をいたぶり、レイプのシナリオの先々を妄想しながら微笑した。
「そろそろ奥さんの下の花びらが、男を欲しがって濡れてくる頃だろうね?」
島袋の言う『下の花びら』とは何なのか、それは紗耶香でもじゅうぶんにわかる隠語だった。
「そこだけは、そこだけは……」
両膝をぴったり閉じて拒絶する紗耶香にかまわず、五十過ぎの男の胴体がぎゅうぎゅうと割り込んでくる。
汗と唾液にまみれた乳房を放置して、紗耶香の腰にあるスカートを思いきりまくる島袋。
色白の太ももに似合いの白い下着は、下からのぞくのとはまた違った雰囲気がある。
「人妻の匂いがするよ、奥さん」
鼻の穴をふくらませながら、島袋が紗耶香のショーツを脱がしにかかる。
「何度でも謝りますから、そこだけはゆるしてください……」
「何を謝るんだね?」
「自分のしてしまったミスをです……」
きわどいところで島袋の手が止まった。
「ならば、これくらいの犠牲も仕方がないんじゃないのか?」
突然、脇の下と脚の下を抱きかかえられた紗耶香は、そのままお姫さま抱っこの恰好になって、声を上げる間もなくリビングのソファーに下ろされた。
島袋の下半身は露出されたままである。紗耶香のほうは、はだけたブラジャーを二の腕に巻きつけ、先ほど脱がされかけたショーツはスカートの中におさまっている。
「女なら女らしく、体で償ってもらわないといけないね」
怯えて身をよじる紗耶香に向かって余裕で襲いかかる。