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人妻苑―ひとづまのその―
【若奥さん 官能小説】

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初―うぶ―-8

 ホックをはずし、いよいよファスナーに指をかけると、低い位置から相手の顔を見上げた。

 そんな物欲しげな目で見つめないでくれ──。

 思い込みのはげしい島袋の股間は、奉仕されているようなこのシチュエーションに興奮して、もりもりとふくらみはじめる。紗耶香もとうぜん、その一点を見つめている。

 はやく帰りたい──。

 自宅の新築の匂いが恋しくなり、紗耶香はついに泣き出した。
 自分にも、いたらないところがあったかもしれない。そのことがずっと頭の片隅に引っかかっていて、自分はこんな風俗の真似みたいなことをしているのだ。
 紗耶香はめそめそと惨めな涙を流しながら、ときどき声を引きつらせて、心の中で自分の欠点を責めた。

「ごめんなさい……、ごめんなさい……」

 今にも泣き崩れてしまいそうな紗耶香を見下げて、さすがにかわいそうだなと島袋は思いはじめる。

「奥さん、私も少し言い過ぎた。だから泣かないでくれ」

 けれども紗耶香は聞かない。涙の粒をぽろぽろとこぼしながら、力の入らない細い手でスラックスを下ろしていく。
 しがみついていたものが足元にまでくると、島袋の下半身が露わになった。
 紗耶香はとっさに顔を背けて、見たか見ないかわからない残像を振り払う。

 しかし生真面目な紗耶香は思う。

 もし自分の父親が介護の必要な体にでもなったら、こんなふうにトイレの世話をやることだってあるかもしれない。
 それは自分の家族に限らず、義父や義母にだって言えることだ。
 ホームヘルパーという仕事に従事する人の気持ちは、果たして性的なストレスを感じるものなのだろうか。

 島袋慶次、彼の求めるものが私の中にあるとすれば、それは──。

 何事も途中で投げ出すことが嫌いな紗耶香は、涙や鼻水をハンカチで拭いながら、くよくよ考えるのをやめた。
 見上げた先に、剛毛を生やした男性器が直立していた。
 それはまるでスッポンの首が反り返るみたいに、毒々しい鉛色の皮から頭だけを出して、ぎちぎちに勃起している。

「汚れを拭いて、ズボンを穿かせてくれ」

 紗耶香がいろいろ考えているうちに、島袋はすでに用を済ませていた。
 そして女の涙に弱気になっていた気持ちも、今は見る影もない。

 奥さんの子宮に、たっぷり注いでしまいたいだけなのだよ──。

「さあ、やってくれ」

 アンモニアの臭いを漂わせながら、非情な現実を紗耶香に突きつける島袋。
 どうして自分はこんなに頑張っているのだろうかと、紗耶香はまた泣きそうになる。
 人前で泣くこと以上にみっともない行為をこれからやるのだとわかっていても、島袋からのハラスメントに神経をすり減らしながら、紗耶香は献身のポーズを取るのだった。


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