嘆きの人魚 ☆-1
歩美と言う絶好の性欲処理人形を手に入れた留吉であったが、加奈への欲望は治まるどころかますますその異常さを増していく。
8月27日
夏休み期間中ではあるが、水泳部員が早朝より強化練習に励む中。
その中にある一人の少女を留吉のギラついた目が追う。
「たまらねぇ……」
そう呟きながら留吉は、自らを扱きだしたい衝動に駆られるが流石に自重する。
「何度観ても、やっぱりたまらねぇ。良い身体してやがるガキだ。あの身体…… 騎上位で…… 今に歩美みたいに、白目向くまで騎上位で突き上げてやる」
そうひとり事を言いながらも、手詰まり感は否めない留吉であった。
歩美に比べ、加奈の注目度は比較にならない。
校内で迂闊に声をかけようものなら、不良グループからリンチでもされかねない。
留吉も校内では、加奈とは全く正反対の方向で注目されている。
それに先回歩美の時に使った盗撮と言う手も難しい。
なにぶんビデオカメラは自分の所有物では無いし、前倒しで借り受けた事を校長に訝しがられてもいる。
「何か他に良い手が無い物か……」
狡猾かつ権謀術策の泉を持つ留吉であったが、今度ばかりは厳しい状態であった。
しかしその留吉の欲望が暴走する日がやって来る。
連日その性を貪りつくしていた小沼歩美が、突如盲腸で入院する事になる。
流石の留吉もこれでは手を出す事が出来ない。
そして、溜まりに溜まった留吉の性欲が爆発する。
その日強化練習が終わった加奈は、更衣室に忘れたキャップを取りにひとり戻る。
それをタイミング悪く留吉の目が捉える。
「藤岡さん今度問題起こしたら、いくら叔父さんの頼みでも……」
留吉の脳裏には、数ヶ月前に校長から受けた最後通告とも取れる言葉が浮かんでいた。
留吉は校内で女子生徒のスカートの中を手鏡で覗きこんでいるところを見咎められている。
幸い行為の程度が軽い事と、女子生徒も恥ずかしがり大事には至らなかった。
制服姿の加奈を密かに追い、気が付くと更衣室内まで入り込んでいた。
振り返り、脅え今にも叫びだしそうな加奈の顔がそこにはあった。
咄嗟に細い加奈の首に両手をかける留吉。
「やっちまった……」
流石の留吉も、平常心ではいられなかった。
今までいろんな犯罪を犯してきた留吉ではあるが、流石に“殺人”は無かった。
いくら加奈が叫び声を上げようとしたとは言え、首を絞めるのは不味かった。
自らの足元に倒れ込んでいる加奈を目前にして、留吉の目に暗雲がたちこみはじめる。
どうするべきか?
このピンチをどう切り抜けたら良いのか?