エピローグ-5
すると蓮は、優花の答えを知っていたかのように、小さく頷きながら、
「でも、最後に一つだけおれのワガママきいて欲しいんだ」
と、はにかんだ笑みを見せた。
「え、何……?」
すかさず優花の顔が強張る。
即座に浮かんだのは、手切れ金や慰謝料の類を要求してくるのでは? という懸念だった。
だが蓮は少し顔を赤くして、
「最後に、少しだけでいいからデートして欲しいんだ」
と、照れ臭そうに少し伸びた髪の毛をガシガシ掻いていた。
最後のワガママが意外にもささやかで、優花は目を丸くして蓮を見つめた。
しかし、蓮は恥ずかしいのか優花と目を合わせようとしない。
(意外と照れ屋なとこも大好きだったな)
そんなことを思いながら優花は目を細め、
「……わかった」
と、首を縦に振った。
すると、蓮は安心したように大きく息を吐き、すぐさま優花の手首を掴んだ。
「よし、じゃあ最後のデートするぞ!」
「ちょ、ちょっと待ってよ! 今から!?
あたし部屋着だし、まだ化粧もしてな……」
「大丈夫だよ、お前はそのままで充分可愛いんだから」
蓮はグイグイ優花の手を引いて、玄関へと連れて行った。