エピローグ-4
細くて長身、大きくて丸い瞳が夜の猫みたいで可愛くて、高くもなく低くもない鼻はスッキリ筋が通っていて。
口角の上がった薄い唇で不敵に笑われた時なんかは、いつも優花の脳髄に甘い痺れをもたらした。
そんな蓮の外見は、優花にとってドンピシャと言えるほど理想のタイプだった。
逃がした魚は大きい、というわけじゃないけれど、これを逃すともう理想の人と出会えないのではというズルい考えが即座に優花の頭の中をよぎる。
……だけど。
優花はギュッと目を閉じ、そのズルい考えを振り払った。
それ以上に、たくさんこの男には泣かされっぱなしだったことを、優花は思い出した。
散々浮気を繰り返し、自分に都合が悪くなるとすぐに優花に手をあげる。
働くことは一切しないで、優花の働いたお金を湯水のように使い込み。
それでいて、優花が離れようとすると慌ててすがりつき、その場しのぎの反省をするだけ。
そんな蓮に愛想を尽かしかけていたものの、すがりつかれるたびに“やっぱりアタシじゃないとダメなんだ”と、結局許してしまっていた。
でも、今日こそは前に進まないとと優花は決心し、毛布を握る手に力を込めた。
そして、一呼吸置いてから、
「……わかった」
と、頷いた。