エピローグ-2
テレビの音に気が散って、眠るに眠れず寝返りを打ってばかりいると、玄関のドアが開く音がした。
その気配に焦る女。
いつもなら喧嘩になって女を殴ったあと、男は少なくとも1時間は帰ってこないのに、今日に限っては30分もしないうちに戻ってきたからである。
(なんでもう帰ってくんの!?)
女は怯えたように、毛布にくるまった自分の身体を丸く縮こまらせた。
(早く寝た振りしないと……)
聞き慣れた男の足音が近づくにつれ、女の身体は緊張と怯えで強張ってしまう。
すぐさま部屋のドアがガチャリと開けられる。
寝た振りが通じますように、と女はなるべく寝息に聞こえるよう、ゆっくり呼吸をし始めた。
でも顔は見られたくなかったから壁際を向いて。
やがて、男がベッドに座ったのだろう、スプリングのきしむ音がギシッと部屋に響いた。
そして男は猫なで声を出して、毛布越しの女の身体を二、三度ゆすった。
「なあ優花(ゆうか)、起きろよ」