君をもう一度抱きしめたい2-9
まともに久留米の顔を見れず、泳ぐ視線は膝の上に置いた手に行き着く。
すると、小さな手が俺の手の上にそっと重なってきて、驚いて隣に座る芽衣子の顔を見た。
「……久留米くんが茂のこと恨むわけないじゃん」
そのまま俺の手をしっかり握った芽衣子は、フッと微笑んだ。
「久留米くん、茂が死んだって話をした時に、ボロボロ泣いてたよ。
いつも茂に悪態吐いてばかりだった、あの久留米くんが、だよ。
当然だよね。だって、大好きな親友が死んだって聞かされたんだもん」
「芽衣子……」
「久留米くんはそういう人だって知ってるはずでしょ?
口ではしょっちゅうお互いのこと悪く言ってても、一緒にいると二人して大声で笑い合って、ふざけてバカやってばかりで……。
茂と久留米くんを見てると、あたしも男になって一緒にバカやりたかったなあって、いつも羨ましく思ってたよ。
久留米くんにとって、茂はそれほど大事な親友なんだよ。
だから、茂のこと恨むわけがないじゃん」
自信たっぷりに言い切った芽衣子の言葉に、ようやく久留米の顔を見ることができた。