君をもう一度抱きしめたい2-5
「痛い! 何すんですか!」
頭頂部を涙目で押さえながら、奴は俺に恨めしそうな視線を向けた。
「自分の胸に手をあてて聞いてみろ。
ったく、お前にはデリカシーって奴が無いのかよ」
「そんなのめちゃくちゃ持ち合わせてますよ!
私だって申し訳ないと思ったから、有野さんにフォロー入れてたのに……」
決してふざけているわけではないらしく、真面目に反論してくる園田に、俺はため息が止まらなかった。
「お前がずっと女に縁がなかった理由が、なんかわかった気がするよ」
そんな俺の嫌みにも気付かない園田は、頭の上に疑問符を浮かべたような表情で小首を傾げるだけだった。
やがて園田は、この張り詰めた空気に耐えられなくなったのか、ハンカチを胸ポケットから取り出して額の汗を拭き拭き、芽衣子の背中に向けてさらに話しかけた。
「ま、まあ、そんないきさつを知った手島さんは、あなたと久留米さんの邪魔をするため、有野さんのそばにいたわけなんです。
でも、私は真面目で一途な久留米さんがえらく気に入りましてねえ。
実は、このまま有野さんと久留米さんがくっつけばハッピーエンドだなあって思ってたんです」
園田の言葉に芽衣子の身体がピクリと反応した。
「でも、有野さんが私の予想をはるかに上回るバカで、こんな人でなしのために後追い自殺なんてしちゃうもんだから、私は残された久留米さんがとてもいたたまれなくなって……」
園田はハンカチで目元を押さえながら、少し離れた所で気を失っている久留米の方に視線を向けた。