君をもう一度抱きしめたい2-22
芽衣子はまるで子供を抱く母親のように俺の頭をポンポン叩きながら、耳元でそっと囁き始めた。
「あたしね、茂とまたこうして一緒にいられたことは、奇跡だって思うんだ」
「奇跡?」
「うん、茂が起こしてくれた奇跡。
まさか、死んだ先にこんな世界があって、また茂に会えるなんて思わなかったもの」
「……こんなん奇跡のうちに入んねーよ。
お互い生まれ変わっても、また一緒になんなきゃ奇跡じゃねえし」
すっかり卑屈になった俺の頭を、いい子いい子するように撫でてくれた彼女は、
「じゃあ、今度はあたしが奇跡を起こしたげる!」
と、白い歯を見せて笑った。
「……どういうことだよ」
言ってる意味がわからず、芽衣子の顔をまじまじ見れば、
「あたしが、いつか必ず生まれ変わった茂を見つけてみせるから。
そしたら、今度は二人で一生懸命生きていこう」
と、俺の頬に軽くキスをしてきた。
――何を根拠にそんな自信たっぷりなんだか。
気休めだとしても、脳天気に笑う彼女の顔を見れば、小さな奇跡に賭けたくなった。
そうして見つめ合っているうちに、芽衣子の笑顔が次第にぼやけていくことに気付く。
芽衣子に抱き締められているはずなのに、その感触もじわじわ薄れていく。
――いよいよ来たんだ、成仏する時が。
だんだん遠のいていく意識。
眠りに落ちるあの感覚とどことなく似ていて、なんだか心地よかった。
やがて、芽衣子の腕の中で完全に意識を失う直前、
「……生まれ変わっても、また一緒になろうね」
と、最愛の彼女の声が聞こえてきたような気がした。