君をもう一度抱きしめたい2-16
「……手島さん、最後に拇印を押していただければ、あとは一分以内にお迎えが来てくれます」
園田が俺の横に来て、おずおずと朱肉と先程の申請書を差し出してきた。
俺と芽衣子はそっと身体を離して、園田を見た。
こんな雰囲気に水を差すような真似をするのが申し訳ないと思っているのだろう。
「おう、わかった」
そんな園田に俺はニッと笑いかけ、いつもの軽い口調でそれらを受け取ってやる。
そして朱肉に親指を押し付けると、自分の名前の横にそれを押し当てた。
「園田、お前にはたくさん迷惑かけちまったな。
でも俺、お前がここまで付き合ってくれてマジで感謝してる。
お前は、久留米の次に大事な友達だ」
「なんだ、二番目ですか」
そう言いながらも奴は嬉しそうに笑う。
「信頼できる奴にしか、俺の女は任せられねえからな。
しっかり芽衣子を成仏させてやってくれよ」
「了解」
彼女の隣で、園田はおどけて敬礼して見せる。
でも、よく見りゃ奴のつぶらな小さな目も潤んでやけにキラキラしていた。
ボロボロ泣きはらす芽衣子と、涙を必死でこらえている園田が対照的で、なぜか笑いがこみ上げてくる。
腹を決めれば気分は不思議と晴れやかだ。
俺は辛気くさいコイツらに向かってニカッと歯を見せると、
「またな!」
と、また明日顔を合わせるかのような軽いテンションで片手を上げた。