君をもう一度抱きしめたい2-15
次の瞬間、俺は持っていたボールペンも申請書も放り出して、芽衣子を抱き締めていた。
死んでから初めて気付いた、芽衣子の大切さ。
声が届いて欲しくて何度も呼び続けた彼女の名前。
ずっと触れたかった、彼女の温もり。
まさか、最後の最後で芽衣子をこの腕で抱き締めることができると思わなかった。
俺の腕の中で身体を震わせ泣いている芽衣子の耳元に、そっと囁く。
「……芽衣子、しばしお別れだ。
俺は、俺とは全く違う人間として生まれ変わってしまうし、お前もまた、全く違う人間として生まれ変わってしまうけど、俺はどこにいたって必ずお前を見つけてみせる」
俺がそう言うと、芽衣子は流れる涙もそのままに顔をそっと上げた。
「俺、一人の女にここまで執着したのはお前だけだよ。
つーか、25年間生きて来て本気で惚れたのはお前しかいねえんだ。
俺、自分が思ってるよりしつこいみたい。
だから、また来世でもお前に惚れて追いかけると思うから、覚悟しとけよ」
「茂……」
ボロボロこぼれる涙を親指で拭ってやるのに、一向に止まない熱い雫。
「お前、いい加減泣き止めって」
「だって、だって……、やっと会えたのにもうお別れなんて……」
駄々をこねるように泣きながら首を横に振る芽衣子を宥めるように、俺はそっとキスをした。
驚いて俺を見上げる彼女に、いつもの調子のいいヘラヘラした笑顔を向け、いつもの軽口を叩く。
「大丈夫だって、必ずまた会えるさ」
冗談めかして言った言葉だけど、必ずそうなるような気がした。