君をもう一度抱きしめたい2-10
芽衣子はそんな俺を見てから、再び久留米の方に視線を向けた。
「あたしこそ、最後に久留米くんの心に傷跡を残すような真似したから、この先彼が自分を責め続けてしまうんじゃないかと思うと、それだけが気掛かりで……」
久留米の性格を考えると、芽衣子を助けられなかったことで、自分を責める可能性は大いにある。
「ホント、俺達がバカなばっかりにコイツには迷惑かけっぱなしだったな」
「うん……。
でも、久留米くんはあたしなんかより、もっともっと素敵な人と出会って、必ず幸せになるって信じてる。
大体、あたしなんかに久留米くんはもったいなさすぎなんだよ。
あたしには茂くらいの男がちょうどいいの」
「何だよ、それ」
俺が口を尖らせて芽衣子を睨みつけると、彼女は舌を出して肩を竦ませた。
「でも、コイツには幸せになって欲しいってのは、俺も同感だ。
散々俺達が傷つけといてなんだけど、前向いて生きてくれよ。
そして、今までホントにホントにありがとう」
俺はダラリと延びた久留米の手を取り、固く握った。
それを見た芽衣子も、久留米の頬を一撫でしてから、
「……ありがとう、久留米くん」
と頭を下げた。
そして芽衣子は、久留米の顔にゆっくり自分の顔を近づけていく。
「おい、芽衣子……」
彼女のしようとしていることに俺は眉をひそめて、それを止めようと芽衣子の肩を掴みかけた。
だが、そのまま手を元に戻す。
――これくらいは許してやるか。
俺は大きく息を吐き、髪の毛をガシガシ掻きながら、クルリと芽衣子達に背を向けた。
背後から聞こえてきた唇が重なる音に、俺は苦笑いを浮かべるだけだった。