君をもう一度抱きしめたい1-1
◇ ◇ ◇
俺の目の前には、目を閉じたままの芽衣子が横たわっていた。
ピクリとも動かない彼女を見てると、まるで眠り姫のようで、キスでもすれば目を覚ましてくれるような気がした。
でも目を覚ました所で、もう取り返しはつかない。
目の前で眠る芽衣子は“霊魂”としての有野芽衣子であり、もはや人間としての彼女ではないのだ。
結論から言えば、俺は芽衣子を助けられなかった。
――数分前。
崖から飛び込んだ俺は、何度も海に潜っていた。
辺りを隈無く探したつもりだった。
一向に見つけられない芽衣子の姿を必死で探したが、過ぎていく時間に比例するように、諦めのような気持ちが勝手に膨らんでいった。
それでも泣きながら芽衣子の名前を呼び続け、波に飲まれながら探し続ける俺を無理矢理岸に連れ戻したのは、久留米についていたはずの園田だった。
岸に上がれと言う園田に対し、諦め切れないで暴れ続ける俺。
そんな俺の頬を、奴は思いっきりひっぱたいた。
そして、静かな声で
「有野さんは、先ほど飛び込んだ場所にいらっしゃいます」
と、悔しそうに言った。
そんな園田の表情で俺は全てを理解したが、感情だけが事実から置いてけぼりにされ、なぜだか吐き気がこみ上げてきた。