君をもう一度抱きしめたい1-4
……こんな時に何笑ってんだよ、このクソババア!
気付けば俺は拳を振り上げ、上野に飛びかかっていくところだった。
しかし、園田が慌てて俺を後ろから羽交い締めにして押さえつける。
「てめえ、何なんだよ! 一人の人間が死んだってのに平然とヘラヘラ笑ってんのか!
芽衣子がどんな思いでここから飛び降りたのか、見てもいねえくせに、無神経なこと言ってんじゃねえ、このクソババアが!」
俺は涙をボロボロこぼしながら上野に向かって怒鳴りつけた。
「え、何この子……」
俺の剣幕に、上野は青い顔して園田を見やる。
「……この方、あの女性の恋人なんです!
上野さん、有野さんの案件はどうか私にやらせて下さい。
成果は上野さんにそのまま計上しときますから!」
暴れ狂う俺を必死に押さえつけつつ、園田はそう叫んだ。
上野も自分の場違いな発言に気付いたのか、慌ててバインダーを地面に置くと
「じゃ、じゃあお願いね……」
と引きつった顔のまま、逃げるようにその場を立ち去った。
上野が立ち去ってから、俺は力無くダラリと振りかざした腕を下ろした。