君をもう一度抱きしめたい1-3
人影の正体は、40代半ばに見える、頬の肉が垂れ下がったお世辞にも綺麗とは言えない、ぽっちゃりしたおばさんだった。
PTAのおばさんがよく着るような、ベージュのノーカラースーツに身を包んだその女は、園田を見るや否や、
「あ、園田さんお疲れさん。
ワタシ、その娘の担当になったのよ」
と場違いな笑い声を上げて俺達のそばへと歩いて来た。
“担当”という言葉に、思わず身体がビクッと震えた。
「あ、上野さん……」
園田が、まずったといった顔をして、上野と呼ばれたおばさんの方に頭を少しだけ下げる。
俺は掴んでいた園田の胸倉を突き飛ばし、上野の方を睨むようにじっと見た。
しかし、上野はそんな俺のことが見えてないかのように園田に向かって、
「その娘、後追い自殺なのよ。
何でも彼氏が先に自殺しちゃったらしくて。
若い子って周りの迷惑考えずに、勢いだけで命を粗末にするからホント困ったものよねえ。
サッサとこの案件も片付けて、早いとこノルマ達成しちゃおっと」
と、バインダーに挟まれた調査書のようなものを見ながらケラケラ笑った。
その瞬間、俺の頭の中で何か糸が切れたような気がした。