君をもう一度抱きしめたい1-22
でも、そんな態度も彼女には痛くも痒くもないらしく、さらにはわざと俺の頭を撫でておちょくってくる。
「お前、俺のことバカにしてんだろ。
人がせっかく正直な気持ちを言ってやったってのに」
むくれて舌打ちをする俺に、彼女は笑いながら、
「ごめんごめん、あんまり茂が可愛くて、ついからかいたくなっちゃった」
と、俺の肩をポンポン叩いた。
他人をからかうことはあっても、からかわれることなんてほとんどなかった俺にとって、この扱いは非常に屈辱的だった。
俺はギロッと芽衣子に凄んでから、彼女の手首をグイッと掴みあげた。
痛みからか、芽衣子は顔を少ししかめる。
「……調子乗んじゃねえぞ」
少しトーンの下がった俺の声に、彼女は息を呑み、怯えたような表情で固まってしまった。
そんな芽衣子の頬にそっと触れると、大げさなくらい身体がビクッと跳ねていた。
「あー、やっぱりガラにもないこと言うんじゃなかった」
思いっきりため息をついてそう言う俺を、芽衣子は瞳を揺らしながら恐る恐る見つめていた。
そんな彼女を見て小さく笑う。
そもそも、俺達には最初から言葉なんていらなかったんだ。
しばしの沈黙の後で、俺はわずかに顔を傾け、ゆっくり芽衣子の顔に近づけていった。
彼女は黙って睫毛を伏せ、俺の服の裾をキュッと掴んだ。
久しぶりに交わした彼女の唇は、とても柔らかくて温かくて、とても俺達が死んでしまったとは思えないほどだった。