君をもう一度抱きしめたい1-21
芽衣子と長い間付き合って来ても、真剣な想いを口にするなんて、こっぱずかしくて言ったことがない。
甘い言葉を囁く時ですら、どこかおちゃらけてごまかしてばかりの俺は、こんな雰囲気が大の苦手だったりする。
でも、ジッと潤んだ瞳で俺を見つめる芽衣子を見ていると、言わなくてはという義務感なんかじゃなく、伝えたいという気持ちが自然と溢れ、言葉が口からこぼれ落ちた。
だけど恥ずかしくてたまらないから、芽衣子の耳元で、彼女にしか聞こえないくらいの声の大きさで放たれたそれ。
「――――」
俺が口に出した気持ちは、思い出したくないくらい恥ずかしかったから、この想いは二人だけの秘密にしておくことにした。
そんな甘い言葉を囁いてしまった俺は、顔から湯気が出るほど熱くなり、そのまま芽衣子から顔を背けた。
けれど彼女はニヤニヤしながら、真っ赤になっているであろう俺の顔を覗き込んでくる。
「なんだよ、ジロジロ見んじゃねえよ」
「ふうん、茂ってばあたしのことそんなに好きだったんだ」
「……わりいかよ」
珍しく芽衣子が優勢になったことが面白くなくて、口を尖らせ彼女を睨みつけた。