君をもう一度抱きしめたい1-2
さっきの場所にどうやって戻ったかは、正直よく覚えていない。
やたら、身体が寒く感じたのだけは覚えている。
覚束ない足取りを、園田がなんとか支えてくれながら、先ほどの断崖にたどり着いて、まず最初に視界に入ったのは、飛び降りてしまう前と変わらない芽衣子の姿だった。
芽衣子の姿を見た瞬間、俺はもつれる足で何とか彼女の元に駆け寄った。
「芽衣子、助かったんだな!」
俺は芽衣子の顔の横に膝をついて、彼女の顔をまじまじ見つめた。
「手島さん……、有野さんはもう……」
なぜか園田は眼鏡を外し、目元をゴシゴシ擦っている。
そんな園田の意味不明な行動なんてシカトしながら、俺は一生懸命芽衣子に話しかけた。
「よかったなあ、お前。
でも海に入って疲れただろ?
もうすぐ久留米も目を覚ますだろうし、サッサと久留米のアパートに帰れよ!
あ、お前海に飛び込んだから潮くせえし、久留米は地面に寝転んで砂まみれだから、帰ったらすぐに風呂入るんだぞ。
お前が“一緒にお風呂入ろ”なんて言えば、アイツは鼻の下伸ばして今日のことなんてチャラにして、全て丸く収まるんだからさ」
そう言って笑いかける俺の肩を、園田はグッと掴んで、
「手島さん、いい加減認めて下さいよ!
有野さんは死んだんですよ」
と叫んだ。
しかし、俺は園田の手を振り払って、
「死んでねえよ!
タチの悪い冗談言うんじゃねえ!」
と、園田を睨みつけ、胸倉を掴みあげた。
笑えない冗談を言う園田をぶん殴ってやろうと、拳を振り上げたそのとき、園田の背後に人影がやって来るのが見え、思わず手を止めた。