君をもう一度抱きしめたい1-18
「え、じゃあもしかして……アレ見てたの?」
芽衣子は涙目になりながら、恐る恐る俺の顔を伺うように覗き込む。
「……そこまではさすがに見ちゃいねえよ、安心しろ」
園田に見張らせてたけど、と心の中で呟きながら、俺は彼女の見てない所で小さく舌を出した。
それを聞いて、安堵のため息を漏らしている芽衣子。
俺はそんな彼女の髪を撫でてから、
「でも、これで浮気される奴の気持ちがわかったんだ。
しかも、浮気相手が友達だと怒りも倍増な。
お前と久留米にはマジでブチ切れたわ」
と、彼女の額をピンと弾いてやった。
「ご、ごめんなさい……」
泣きそうな顔で俯く芽衣子の肩をもう一度抱き寄せ、
「でも、俺だってお前の友達に手を出しまくって、そんな思いをさせてきたんだもんな。
俺こそ悪かった」
と、彼女の耳元で囁くように謝った。
浮気がバレる度に土下座したり、ご機嫌取りをしたりしてごまかしてきた俺にとって、一番気持ちのこもった謝罪を彼女にしたつもりだった。
「茂……」
「だけどあの頃の俺は、お前のことがどうしても許せなかったんだ。
自分のしてきたことを棚に上げてな。
俺が死んだってのに、このままお前と久留米を幸せにさせてたまるかって……、そんなつまらない嫉妬から、お前のことぶっ殺して一緒に生まれ変わってやるって決めたんだ」
うなじの辺りをボリボリ掻きながら舌を出す俺に、彼女は眉をひそめてこちらを見ているだけだった。