君をもう一度抱きしめたい1-15
「久留米くん、めちゃくちゃキレてて、何度も何度も男の人を殴ってた。
でも、殴った弾みであたしのとこに男の人が吹っ飛ばされてきたの。
男の人は、あたしを盾にしたから久留米くんが動けなくなっちゃってね……。
あたしも暴れるか逃げるかできれば良かったんだけど、身体が震えて動けなくてどうしようもできなかった。
でも、なぜかその時男の人は持ってたナイフを遠くに投げたんだよね。あれが無いと不利になるはずなのに。
そしてあたし、何かに肩を掴まれたような気がしたかと思うと、いつの間にか久留米くんの方に突き飛ばされてて。
そうこうしてるうちに男の人がなんでかいきなり倒れ込んじゃったんだ。
ね、不思議でしょ?」
少し興奮気味に話す芽衣子の姿を見て、俺は彼女を抱いていた腕に力を込めた。
あの時、俺が彼女を助けたかった気持ちが伝わっていたような気がした。
「その時は深く考えてなかったんだけど、久留米くんからDVD返されたとき、もしかしたら……なんて茂の顔が浮かんできたんだよね。
映画みたいに死んだはずの茂があたしを助けてくれるなんて、有り得るわけないのに」
ヘヘッと照れ臭そうに笑う芽衣子を見てると、いてもたってもいられなくなってきて、俺の手を弄んでいる彼女の手を思わずキュッと握った。