君をもう一度抱きしめたい1-14
「あたし、久留米くんに告白されて気持ちが揺らいてたんだ。
死んでしまったろくでなしより、あたしを大事にしてくれる久留米くんの元にいけば、幸せになれるのもわかってたんだけど……。
タイミングよく茂に邪魔されちゃったんだよね」
「邪魔?」
確かにいちゃつく二人に散々文句をたれたり、実際邪魔をしに行こうとはしたけれど、いつも園田に止められていたから、まともに邪魔したことなんてないはずなのに。
眉をひそめて考え込んでいる俺に、芽衣子はニッと笑いかけてきた。
「……あたし、久留米くんに告白された日にね、たまたま彼に貸してたDVDを返されたんだ。
“ゴースト”ってあたしが大事にしてたDVDなんだけど……、茂覚えてる?」
覚えてるも何も、隣で一緒に観てたんだぞ、と言おうとした所で、少し顔を曇らせた芽衣子が俺の言葉を遮った。
「あまり言いたくないんだけど、その日ね、あたし知らない男の人に襲われたの。
思いっきり頬を殴られて、ナイフ突きつけられて、ホント怖くて動けなかった。
きっとヤられてから殺されちゃうんだって思ってたら……、すんでのところで久留米くんが助けに来てくれたの」
すぐに助けに行かず、ためらっていた自分を思い出すと、急に後ろめたくなってきて、思わず芽衣子から目をそらした。
しかしそんな俺に気付かない彼女は、
「その時ね、ちょっと不思議なことがあったんだ」
と、俺の手を取ると自分の手に絡めながら静かに呟いた。