アイドリング-3
シートベルトが小刻みに震えて、鎖骨から腰骨にかけての肌にほど良い刺激をあたえてくる。
「西山さん、シートベルトが震えています……」
事実のまんまを報告する天然の友里。
「驚かせてすみません。僕からのおもてなしと思っていただけたら幸いです」
はい、そう思うことにします──。
友里はしばらくシートベルトの振動に身をまかせていた。
「あのう、いつまでこうしていればいいんですか?」
だんだん気持ちよくなってきた友里は、ひとりでに火照っていく体に不安を募らせる。
彼の前では純情なままでいたいのだ。
いきなり、
「ごきげんいかがですか?」
と言って、ナビ画面に西山の顔のアップが映し出された。
突然のことに声も出ない友里は、パチクリと瞬きを連発する。
自分の胸に突き刺さるキューピットの矢が、今ならはっきりと見える。
「水越様?」
「だ、だいじょうぶです。えっと、次はどうしたらいいんですか?」
「それでは、そのままA市方面へ向かってください」
とびきりハンサムな笑顔でナビゲートされるまま、友里はふたたび車を発進させる。
ハザードランプを消すと、シートベルトの振動がぴたりと止んだ。
やれやれと思っていたところに、
「水越様の車の助手席にはきっと、素敵な方が乗られるんでしょうね」
羨ましいといったふうに西山が話しかけてくる。
「あ、あ、あ、あたし、こ、こ、恋人募集中です」
「そんなに謙遜なさらなくてもいいですよ」
ほんとうは年上の彼氏がいる友里だったが、西山のことがあきらめられない気持ちになっていた。
そしてなにより、吹き出すミストを吸い込むたびに不純な疼きが込み上げてくる。
あたし、風邪でもひいちゃったのかな──。
おでこに手をかざしながらさらに道を行くと、なんの前触れもなくシートの座面が震えだす。
「西山さん、今度は運転席が震えています」
ゆるい振動が友里の太ももをブルブル揺らして、もっともっと内側のほうまでくすぐっていく。
「こちらから遠隔操作していますので、ほかにこんなこともできますよ」
西山がネタばらしをしたあと、シートの一部が盛り上がって友里の股間にヒットした。
「きゃ!」
シートからあらわれた突起が前後に移動すると、友里の体の溝をグイグイと撫でて揉んで舐めていく。
「に、西山さん、下から何か変なものが出てきて、動いてます……」
「それもサプライズカーのオプションとなっています。いかがですか?」
「困ります……」
振動と愛撫の共演によって生まれる快感が、友里の大事な部分をもてあそんで集中力を奪っていく。
ミニスカートの生地を押し上げ、さらにショーツの面を軽やかに突かれる動きに、友里の気持ちが淫らな方向へなびいてしまう。
勝手に濡れちゃう、どうしよう──。