プロローグ-3
「悪い待たせたな!」
日曜日、待ち合わせ場所に先輩がやって来た。
「俺も今来たばかりですから....」
「そうか..それじゃ行こうか?」
先輩はそう言って歩き出した。
「先輩!どこ行くんですか?」
「遊園地だよ!」
「遊園地?」
一瞬姫川さんの顔が頭に浮かんだ。
「イヤか?」
「イヤじゃないですけど....」
「だったらいいだろ!」
「ええまあ....」
(男二人で行ってもなぁ....先輩またフラれたのかな....また先輩を慰める事になるのか....こんな事なら....姫川さんを優先すれば良かった....もし姫川さんに逢ったら....彼氏のフリしてあげようかな....)
「葛城!どうかした?」
「いいえ!別に!」
俺は先輩と並んで歩きだした。
「美菜?あんたの彼氏遅いわね?」
「うん....そうだね....何してるのかしら....」
私は彼氏がいない事をなかなか言い出せないでいた。「あのね....」
意を決して打ち明けようとした時
「あっ!遅いよ!」
友人が手を上げた。青年が走って来て
「ゴメン....そっちが言ってた子?」
「うん....で....連れて来てくれた?この子彼氏なんかいないくせに見栄張っているなんてウソまでついて....」
「ちょっと!私は別にウソなんか....」
「いいから!今まで来なかったのが証拠でしょ!もし本当に彼氏がいるなら....電話すれば?彼氏なんだから出来るでしょ!」
(そうか!その手があった!葛城君....上手くやってね!)
私は祈るように携帯を取り出して葛城君に電話しようとした時
「あれっ!美菜!こんな所で何やってんの?」
「えっ?」
顔を上げると葛城君が立っていた。
(私の事....今.."美菜"って呼んだよね....)
「何って....」
私が戸惑っていると
「何でここにいるんだよ!」
私は葛城君の目を見てなんとなくわかった....彼氏のフリをしてくれるのだと....
「何でって....葛城君こそ遅れて来て謝りなさいよ!」
「えっ?俺....今日美菜と約束してたっけ?」
「この前言ったでしょ!友達に紹介したいって!」
「えっ?それって今日だっけ?」
「何言ってるの!今日よ!」
「ゴメン....来週だと思ってた....」
「んもう....いい加減なんだから....葛城君が遅れて来たせいで....私はウソつき扱いされたんだからね!」
「ゴメン....美菜の分は俺が奢るから許して....」
葛城君は両手を合わせて謝った。
「当然でしょ!!私に恥をかかせる所だったんだから!」
私が怒っているように振る舞っていると
「美菜?」
友人が私の背中をつついた。
「えっ?」
私が振り返ると
「あんた....彼氏の事....尻に敷いてるの?」
(し..しまった....お芝居で調子に乗り過ぎた....)
「あ〜あ....バレちゃったね....実は....俺....美菜の尻に....」
(ちょっと!葛城君!何て事言い出すのよ!)
「なんてハズないでしょ!冗談だよ!」
葛城君が笑うと
「葛城!本当に冗談なのか?俺には冗談に見えなかったけどなぁ....」
青年がからかうと
「イヤだなぁ....先輩....冗談に決まってるじゃないですか!あっ!そうだ!紹介がまだでしたね!俺の彼女で姫川美菜さん!でこっちが俺の先輩で.....」
「姫川美菜です....」
葛城君の先輩に頭を下げた後で
「葛城君!こっちが私の中学からの友達で......」
私達は相手を紹介した後、遊園地に向かった。葛城君は遊園地に着くとすぐに私の手を掴み先輩達と別れた。
「帰る時は電話して下さい!」
そう先輩に言い残して....
「あっ!ゴメン....」
葛城君は先輩達と別れた後すぐに手を離した。
「今日は私の彼氏なんだから....」
私は葛城君の腕に自分の腕を絡めた。
「えっ?」
「だって....いつ逢うかわからないから....」
「そうだね....」
葛城君は照れくさそうに笑った。
(葛城君の事....好きでいてもいいよね!)