プロローグ-2
純兄ちゃんと屋上でお弁当を食べ終わった後、暫く話して別れた。
「純兄ちゃん....あれは反則だよ....」
私は弁当箱を洗いながら純兄ちゃんと一緒にお弁当を食べていた時の事を思い出していた。
「私に自分が使っていた箸で食べさせてくれるなんて....勘違いするじゃないの....」
「どうしたの?顔が赤いよ!」
たまたま通りかかった友人が話しかけてきた。
「別に....なんでもない....」
「そう?ならいいけど....次は体育だから遅れないでね!」
「うん....」
友人は更衣室へと歩いて行った。
「胸の奥にしまい込んだはずだったのに....」
私は純兄ちゃんへの想いが溢れ出てくるのを感じていた。
「純兄ちゃんの事好きになってもいいのかな....」
授業が終わって帰ろうとした時
「葛城君!ちょっといい?」
姫川さんに呼び止められた。
「ああ....大丈夫だよ!」
そう答えると
「ここじゃ....あれだから....一緒に来てくれる?」
「ああいいよ!」
姫川さんの後について行って学校を出て暫く歩いた後で
「葛城君....今度の日曜日....何か用事ある?」
そう尋ねてきた。
「今度の日曜日?」
「うん....実は....今度の日曜日に中学の時の同級生と遊園地に行く事になって....良かったら私と一緒に行ってくれないかなって....」
「姫川さんと一緒に?」
「うん....それで....私の彼氏になって欲しいんだけど....」
「姫川さんの彼氏!?」
「あっ!彼氏のフリでいいの....その子....彼氏がカッコいいとか....優しいとか....あまりに自慢するから....つい私にも彼氏が出来たって言ったら....こんな事になって....」
「それなら本当の彼氏と行ったほうが....」
「本当に彼氏がいたらこんな事....葛城君に頼まないわよ!」
「えっ!姫川さん彼氏がいなかったの?」
姫川さんは小さく頷いた。
「姫川さんは美人だから....彼氏がいるんだと思ってた....」
「で....どうなの....」
「ゴメン....その日は先輩と約束が....」
姫川さんはガッカリとした顔をして
「そう....それなら仕方ないわね....」
そう呟いた。
「あっ!そうだ!俺の代わりに....」
「それだけは絶対にイヤ!!」
「俺....何も言ってないけど....」
「わかるわよ!あの人に頼むくらいなら....見栄を張ってウソをついたと..笑われるほうがましよ!」
「ハハハ....」
(そこまで嫌わなくても....ご愁傷様....拓弥....)
俺は笑って誤魔化すしかなかった。
「葛城君..ゴメンね....時間をとらせて....」
「俺のほうこそゴメン....先輩との約束がなかったら....こっちからお願いしたいくらいなのに....」
「ううん!気にしないで....それじゃ......」
姫川さんは肩を落として帰って行った。俺はそんな姫川さんを見ていて
「あっ!姫川さん!待って!」
俺は姫川さんを追いかけて行って
「俺!先輩との約束を断るよ!だから....」
「ううん....いいよ....気にしないで....ウソをついた私が悪いんだから....先輩との約束を優先させて!ありがとう!気を使ってくれて....それじゃ....またね....」
「うん......」
俺は姫川さんを複雑な思いで見送った。