先輩の企み-5
愛くるしい顔をしている祐梨だが、良く見ると昨夜の寝不足とは違う顔色の悪さを見て取れた。
「ちょっと席を外します」
そう言って祐梨が事務室を出て行った。
これで二度目である。
先ほども同じことを言って出て行き、30分近く帰って来なかった。
事務室内は皆忙しそうにざわざわと仕事をしていて、そんな祐梨に気づいたのは聡美だけだった。
聡美は、祐梨がどこへ行ったのかを知っていた。
可愛い顔を歪めながらトイレで踏ん張る祐梨の姿が目に浮かんだ。
下腹を押さえ、呻き声を上げながら踏ん張るが、便の塊を押し出すことはできない。
長い時間が過ぎ、祐梨が事務室に戻ってきた。
浮かない表情をして困惑していることが見て取れる。
またしても排便に失敗したようである。
それを見た聡美の目が光ったことに気づく者はいなかった。
計画を実行に移す時はきた。
「祐梨。一緒に見てほしいファイルがあるの。そっちのPCで見るから月間表のファイルを開いて」
聡美が席を立ち祐梨の背後に回った。
「分かりました。このファイルですか?」
言われたとおりにPCを操作する祐梨。
「どれどれ」
聡美は後ろから、座っている祐梨の顔に近寄った。
周囲からは、同じ目線でPCのモニターを見ながら熱心に仕事をしているように見える。
しばらくエクセル表をあれこれ操作していた二人だったが、一段落した時に聡美は祐梨に囁いた。
「ところで…」
聡美は、さらに祐梨の耳元に顔を近づけた。
祐梨のふんわりした髪はリンスの甘い残り香がした。
内緒話をするような小声で囁く。
「どう?出た?」
マウスを動かしていた祐梨の手が止まり、モニター上のポインターが一か所で静止した。
不意に図星を突かれ祐梨の胸の鼓動が強くなる。