週末デートの締めくくり-1
――月曜日。
仕事を終えたエメリナを、ローザが駅前のカフェで待ち構えていた。
二人の間には、ケーキ5個とたっぷりアイスに果物てんこもりの特大パフェが、ドーンとそびえ立っている。
見ただけで胸焼けしそうだが、ここは北国フロッケンベルクから進出した、錬金術ギルド経営のカフェチェーン店。
薬草と氷の魔法で作ったアイスは、味は濃厚なのにカロリーは低く、胃もたれもしない。
ここの名物で、ローザとエメリナのお気に入りだ。
しかしメインはもちろん、週末のデート報告。
山盛りパフェを崩しながら、向かいでわくわく顔のローザへ、土曜日の奮戦を報告する。
「――それから敗者復活で再戦権をとって、イヴァンを最終戦で叩きのめしてやったわ!あー、すっきりした!」
エメリナはさじに乗せたアイスを、パクンと口に入れる。
外気では殆ど溶けないのに、口に入れた瞬間さっと溶けた。ブルーベリーの甘酸っぱさが口内に広がる。
エメリナはあくまで余興の挑戦者だったから、特別賞にとどまった。
優勝に名を刻んだのはイヴァンだし、優勝賞品も彼のものだ。
でも、そんなのは大したことじゃない。
長年のしこりを、綺麗さっぱり流しきった気分は最高だ。
それに特別賞の賞品も素敵だった。
最新型の携帯タブレットと、全国で使用できるお食事券だ。
このパフェ代金も、そこから出ている。
ところがローザは、スプーンを咥えたまま非常に渋い顔で、こちらを睨んでいた。
「大丈夫?舌でも噛んだ?」
「違うわよっ!!」
ポンとスプーンを吐き出し、猛烈な勢いでローザが身を乗り出す。
「あんなクズへのリベンジ話なんか、どうでも良いの!もっとも、今度アイツを見たら……もいでやるけどね」
ドスの聞いた迫力満点声と共に、パフェのバナナをもきっと折る。
ちょうど隣の席を片付けていたウェイターに聞こえてしまったらしく、アルバイトらしい少年は、ぎょっとした顔で振り向いた。
「ちょ……ローザ、声がおおきいっ」
慌てて親友の口に、大粒イチゴを突っ込んだ。
「もがっ!……んぐ、肝心なのは……んぐ、そこじゃないでしょ!」
「え?」
「カマトトぶってないで、ほれほれ、とっとと白状せんか」
ローザは声をひそめ、時代劇に出るスケベ代官のような口調でニヤニヤとせっつく。
「気合入れて用意したアレは、役にたったの?」
「っ!!えっと……まぁ、ね」
しどろもどろにエメリナは答え、赤くなった半端に長い耳を抑える。
パフェに顔を突っ込んで隠れたいほど恥ずかしいのに、思い出すと、勝手に口元がニヤけてしまう。