君とサヨナラする日2-18
なのに園田はさらに泣き出し、
「全くあんたって人はどこまで節操ないんですか!
せっかく人が少しでもいい環境で生まれ変われるよう配慮してやってんのに……!」
と俺を睨んだ。
とことん面倒見のよいこのおっさんにとって、俺は本当に世話の焼けるクソガキだっただろうと思うと更に笑えてくる。
でもお前に会って、少しは成長できたつもりでいるんだ。
だから俺は、
「大丈夫だ、俺は来世ではどんな環境でも受け入れてやる。
生老病死なんざ屁でもねえよ」
と、園田に親指をグッと立ててから、再び断崖の際に向かって走り出した。
下を覗き込むと、ゴツゴツした岩に波がぶつかって白くなっているのが見える。
生ぬるい風が汗ばんだ身体の体温をスッと奪っていく。
恐怖がこみ上げ、ゴクリと生唾を飲み込んでしまう。
死んでいるから、死ぬ心配なんていらないはずなのに膝がガクガク笑い出す。
こんな恐怖の中で、芽衣子は俺のいない世界に絶望し、その身を投じた。
でも芽衣子には、死んで後悔してばかりの俺の二の舞にはさせたくない。
“生きている”ってことは、すげえありがたいんだってことを今からアイツのバカな頭に叩き込んでやる。
俺は生唾をもう一度飲み込み、
「芽衣子……、死ぬんじゃねえぞ」
と呟いてから、海に向かって大きな一歩を踏み出した。