君とサヨナラする日2-16
久留米の身体が2、3メートルほど後ろに吹っ飛ばされる。
突然の出来事に呻きながら身体をうずくませる久留米。
俺はさらに奴の身体にまたがる。
「ごめんな、久留米。
でも、こうでもしねえとお前は後先考えずに飛び込んじまうだろ!?
芽衣子は必ず俺が助けてやるから、お前は芽衣子の帰りを黙って待っててやれ!」
俺は目をキツく閉じ、ギリッと奥歯を噛み締めながら、久留米の鳩尾に全体重をかける勢いで思いっきり殴りつけた。
ガードをしていなかったせいか、久留米の身体は俺の拳が入ったと同時にビクンと跳ね、口から胃の中の物が出てきそうな勢いで苦しそうにえずいていた。
やがて久留米の目は虚ろになり、次第にゆっくり瞼が閉じられていく。
閉じられていく瞳からは、たった一筋だけ涙がこぼれていた。
それを見れば俺もつられて涙が流れてくる。
「……ごめん」
気を失っていく久留米の顔を見つめながら謝ると、コイツはほとんど聞こえないくらい小さな声で、
「茂……」
と呟いた。
芽衣子の名前じゃなく、俺の名前を呼んだ久留米に面食らったが、すぐさま俺はニッと奴に笑いかけ、
「わかってるって、なんだかんだ言ってお前、俺に頼ってんだろ?
ちょっくらあのバカ助けに行ってくるから、お前は少し寝てろ」
と瞼をゴシゴシ擦ってから、スクッと立ち上がった。