君とサヨナラする日2-12
芽衣子の立っている位置は断崖の際であり、そこには木の杭とロープで作られた簡易的な柵があった。
しかし、長年の雨風に晒されているうちに、ロープは千切れ、杭は腐り落ち、柵の役目などほとんど果たさなくなっている。
そんな危険な場所に立つ芽衣子の足元をよく見れば、ジリジリとサンダルをほんの数センチずつ後退させていた。
それを見た俺は、サーッと血の気がひいていき、膝がガタガタ震え始めた。
「わかったよ……。
オレ、もうお前に気持ちを押し付けるような真似、しないからさ……。
……だから頼む、とにかくそこから離れてくれ」
久留米も、ただならぬ芽衣子の気配を察知したのだろう、とにかく芽衣子を刺激しないように静かにそう言った。
すると散々泣きじゃくっていた芽衣子は、目尻に涙を浮かべながらも、急に久留米に向かって微笑んだ。
「あたし、久留米くんって最高にいい男だと思う。
こんないい男に好きになってもらえるなんて、女冥利に尽きるってもんだよね。
あたし、久留米くんからたくさんの優しさもらって本当に幸せだった」
「なあ、いきなり何言い出すんだよ……」
突然語り出した芽衣子に、久留米は訝しげな表情を浮かべ、彼女を見つめた。