卑弥呼-6
「これはご無礼を。珍しい建物であったので近づいていたまでです。」とミコトはすかさず弁明する。
『見ない顔だな。怪しい奴らだ。』と若い兵らはまだ疑っている。と、後ろにいたカルがずいっと前に出てきた。
「おい、カル。よせ。」何をしようとしているのか察知したミコトは慌てて止めようとする。しかし、それは兵士二人にも理解できた。
『てめぇ、やる気か?』武人同士の気質であろうか?お互いに何をすべきか察知した。そして兵士二人とカルが戦闘態勢に入る。
「めんどくせぇ。二人同時に来い。」カルがたどたどしい大陸のことばで話した途端。二人のうち一人が猫のように身を翻して飛び蹴りを食らわしてきた。脳天に食らえば確実に昏倒するであろう。しかしカルは身軽にしゃがんで避けると、「おりゃ!」と相手の不安定な腰に逆に回し蹴りをくらわせて倒した。
すると今度は激しく拳を突き出してきた。横で見ていたミコトには腕が何十本にも見えた−−それほど素早い拳であった。
カルは胸や腹に数発拳を受けたがひるむことなく、相手の腹に鋭い一拳を食らわした。相手はたまらず倒れる。
「おのれ・・・この程度で済むと思うなよ。」と二人が立ち上がろうとした時−−
パチパチパチ。
横から拍手が聞こえてきた。
どこから?いつの間に?ミコトを含め4人が4人ともそう思っていた。しかし、兵士二人はとても驚いた表情をしている。
「おまえたちの負けだよ。おとなしく引きなさい。馬は訓練の後で腹を空かせている。さあ、早く自分達の仕事をしなさい。」
そう言われて兵士達は慌てて厩舎の中に入っていった。
「あの・・・」ミコトが何か言おうとしたが、『あなた達も注意しなさい。ここはもともと兵士しか入ってはいけない場所だよ。』と諭された。
「はっ!申し訳ありません」と謝るとともに男をじっと見る。歳は60くらいであろうか。ただならぬ雰囲気を有している。
『さあ、もう行きなさい。あれは、あなたたちを探しているのではないのかね?』と言って遠くを見る。
その視線の先にはカル達を案内していた役人の姿があった。
『さあ、行きなさい。私ももう行く。今日は珍しい客人が来るらしいのでね。』
そう言って男は去っていった。
『どこに行っておられたのですか?探しましたぞ。少し目を離した間にいなくなったもので・・・』
「申し訳ありません。少し辺りを見て歩いておりました。」
『この辺りには気が荒い兵士もおりますのできをつけてください。 まぁ、よいとしましょう。謁見の儀式が始まります。正装に着替えていただきますので、まずは場所をご案内いたします。』
こうして、ミコトとカルは魏の皇帝に謁見することになったのである。