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果葬 ―かそう―
【その他 官能小説】

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―10―-1

 銀行員としてのキャリアがまだまだ不足しているのだと、つい先日も上司から叱責されたばかりだった。

 毎日おなじ窓口に立ち、相手の顔色を窺いながら愛想笑いをつくる。
 それがどうにも自分には向いていないんじゃないかと、月島才子(つきしまさいこ)は最近になってよく思うようになっていた。

 大学を経て、大手銀行に就職が決まったまではよかったのだが、その後はずっと下り坂の毎日だった。

 職場でのセクシャルハラスメントは特にひどかった。
 胸や腰のまわりを撫でられることが何度かつづき、そういうことはやめてくださいと抗議すると、今度は個室に呼び出されるのだ。

 予想通り、仕事とはまったく関係のない質問責めに遭った。
 恋人はいるのか、処女喪失は何歳で相手は誰か、自慰行為の頻度や特別な嗜好品があるのかどうか、およそ女性が答えられないようなことばかり訊かれたりした。

 上司からの命令だと凄まれたら、すべて正直に告白するしかなかった。

 そしてある日、才子は仕事でミスをした。
 金額を一桁間違って入力してしまったのだ。

 それには理由があった。

 才子がミスをしたその日、彼女の膣内にはバイブレーターが仕込んであった。
 当然、上司がそうするように命じたのだ。

 才子が澄ました顔で接客しているさ中、玩具は遠隔操作され、彼女はそこで人知れず快感をあたえられていた。
 そこでミスが起きたのである。

 才子はふたたび上司に呼び出され、不覚の液で汚れたショーツを手に、言葉の圧力を受けた。
 システムの誤作動によるものならまだしも、これがヒューマンエラーなら君の責任は重大だ、と。

 そして才子の救済方法として、男性上司はオーラルセックスを要求してきた。
 才子は戸惑いながらも、その条件を呑む以外に選択肢はないのだと思い込んでいた。

 稚拙なフェラチオで精液を飲まされたあと、今度は才子が舐められる側になった。
 濃密で汚らしいクンニリングスの果てに、才子は何度か絶頂した。

 上司はさらに嘘の昇進話を持ちかけて、従順な部下の体をもてあそび、ホテルで密会しては体の関係をより深いものへと発展させていく。

 ピルに手を出した才子の子宮は悲鳴を上げ、便器以下の扱いを受けてもなおアクメに染まるほど腐っていった。

 そうやって今日までの出来事を振り返ってみて、退職願も出せないでいる自分自身がとても情けなかった。
 今の仕事を辞めて永久就職しようにも、相手の男性にまったくその気がないのだ。

 こんなふうだから、仕事にも私生活にも嫌気が差していた。

 仕事帰りの夜道を一人で歩き、なんとなく見覚えのある歓楽街にたどり着くと、才子は一軒の店に目星をつけてそのドアをくぐった。

 淫靡な匂いに包まれた店内はなんとも言えず独特で、健全な表社会とは裏腹に、どこか金銭感覚を麻痺させる毒素が漂っているようにも見えた。

「いらっしゃい、このあいだはどうも」

 ニューハーフのママがこちらに愛想を送ってくる。

 才子は会釈を返して、

「おいしいお酒、今日もお願い」

 気取った文句を添えた。


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