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「俺らはほんとうに何も知らないんだ。ちゃんと調べてくれ」
馬渕が目を剥いて訴えてくるのを北条が手で制し、新たな写真二枚を提示して、
「そこでです」
と改まった。
「この男性二人の顔に見覚えは?」
「ああ、この刑事ならよく覚えてるよ。こっちが大上で、こっちが沢田だろ?」
馬渕の証言を聞くなり、北条と五十嵐は顔を見合わせた。
「彼らはここで何をしていたのでしょう?」
北条がさらに追及する。
「何って、そりゃあ、あんたらとおなじ刑事なんだ。そっちで話はついてるはずだろう?」
「青峰由香里絡みの内容、というわけですね?」
「とぼけやがって」
馬渕は、ふん、と鼻から息を吹いた。
間もなく自分の目の前で二人の刑事がこそこそやりはじめたもんだから、それが余計に気に入らない。
税金の無駄遣いばかりしやがってと言わんばかりに、馬渕は煙草に火をつけて、その煙で刑事らを追い払おうと目論んだ。
しかし効果はあまりなさそうだった。
「すみません、最後の質問です」
この台詞を言った時、北条は目に意識を集中させた。
そして冷静に相手を見据えて、
「青峰由香里は、どのような経緯でこの雀荘を訪れる気になったのでしょうか?」
と馬渕に迫った。
相手の返答しだいでは、吉にも凶にもころぶ可能性がある。
「顔見知りの女に勧められたみたいだぜ」
馬渕のしゃべったこの事実を聞いて、ここが事件のターニングポイントになるだろうと、北条は手応えを感じていた。