―3―-5
「あ……うん、うっ……んっ……あっ、はあ……ん」
心地よい浮遊感と痙攣におそわれたまま、由香里は何もしない。
はっきりしたことは、自分の中に精液が放たれたという最悪の事実だけだった。
「次は俺だ、ちゃんと奉仕しろよ」
男が交代すると、由香里はただ人形のように扱われ、人格を置き去りにされたままふたたび犯された。
感情の一つ一つをばらばらにされて、恐いのか、悲しいのか、果たして悦びを感じているのかもわからないでいた。
妊娠──中絶──離婚──吐き気のしそうな文字ばかりが呪文のように頭をよぎった、その瞬間だった。
「そこまでだ」
鍵のかかっていないドアが蹴破られ、威嚇を含んだ声がした。
何事が起きたのかと、全員の視線がそちらを睨む。
すると背広姿の二人組の男が、ずかずかと立ち入ってきた。
「おまえさんたち、こんなところで何をやっている?」
鉄砲風を吹きかけるみたいに訪問者の一人が言った。
「あんたら、誰?」
髭の男も臆さず言い返す。
そこで背広の片方が沢田と名乗り、同時に手帳を見せた。
次いで年配のほうは大上と自称し、こちらもおなじく手帳を提示した。
それがどういう意味なのか、その場に居た誰もが瞬時に理解した。
由香里を取り囲んでいた三人はそれぞれに散らばり、
「刑事が雀荘なんかに、どんな用件で?」
「何か事件でもあったんですか?」
「この女の子は何でもないんで」
と白々しく口をそろえる。
大上はとりあえず自分の上着を由香里の肩にかけて、
「ここにいる連中に何をされていたのです?」
じろりと視線を巡らせた。
「何でもありません、あたしが勝手に脱いだんです……」
由香里はそう言って背中をまるめた。
「まあ、そのあたりの詳しい話は、あとで聞き取りさせていただきますので」
厳しい顔つきの大上は由香里に腕を組ませて、
「おまえさんたちにもすぐにお呼びがかかるだろうから、せいぜい外に出ても恥ずかしくない恰好をしておくんだな」
男らに向かって声を張り上げた。
それに対して反論する者はいなかった。
行きましょうか、と沢田が先を促し、つづいて大上と由香里も部屋をあとにした。
あれはどう見ても熊か猪だ──先ほどの男らのうちの一人を思い出しながら、沢田は吹き出しそうになった。