恥辱指示-1
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《昨日はよく眠れたかい?》
一通のメールが慌ただしく夫と娘を送り出して間もないひと時を悪魔の現実に引き戻した。
滝山がやってくる! 雅恵はパニックになった。何をしたらいいのか頭の中でいろいろな思いが駆け巡る。携帯をもったままリビングからキッチンの間を行ったり来たりしていた。
(どうしたらいいのだろう……)
頭を抱えてテーブルに座り込んでいると携帯がメールを受信した。
《玄関の施錠は解くこと。お互いの秘密を守るためにはスムーズな出入りが必要だからね。出入りに手間取ると近所の目につくよ》
最後の一文が静かな脅し文句となって、雅恵は口に手を当てたまましばらく考えていたが、意を決して玄関の施錠を解いた。
再びリビングに戻り、この状況をいかに回避できるか考えにふけっていた。その時突然テーブルの上に置いていた携帯のメール着信音が鳴り、雅恵はビクリと肩を震わせた。
《出窓の前に立って指示を待って》
雅恵には滝山からのメールが、一体何を目的としているのかさっぱり理解できなかった。表に面している出窓からは、庭先から通りまでを見渡せることが出来た。その出窓の前に立ち滝山を迎えろとでもいうのだろうか。そして何かの指示を受けるのか……。
訳が分からないまま携帯の画面を見続けていた。
持っていた携帯から電話の着信メロディが流れ出した。滝山からであることを確認して、しばらく置いてから出た。
「おはよう。出窓に姿が見えないね」
相変わらず優しげな低い声が携帯から聞こえてきた。
「もう到着したよ。車にいるんだ。さあ、出窓の前に立って」
「いやよ。何であなたの指示に従わなければいけないの」
「いやだなぁ。朝から不機嫌だね。せっかくの二人の門出に散々だね」
「滝山さん。昨日のことは誰にも言いませんから、このまま帰ってください」
「誰にも言わないじゃなくて、言えない、でしょう」
滝山の返しに雅恵は、何も言い返せなかった。
「あんなに感じていたものね」
追い打ちをかけてくる滝山が疎ましかった。
「フェラチオで奉仕してくれたお返しをしないと」
ねちねちとしたいやらしい言葉に雅恵は、打ちのめされる。
「お願い。帰ってください……」
やっとのことで小さな声で返した。
「実は、昨日奥様の携帯から部長のメアドも控えさせてもらってね。今から部長に例の写真送ってもいいんだよ」
滝山は、優しげに喋りながらニヤリと笑った。こうして罠にかかった美しい人妻を言葉でいたぶりながら、自分から従うように仕向けることに嗜虐心が昂ぶる。すでに滝山の漲りがズボンを押し上げて不自由なツッパリ感を感じていた。
「ううっ……。なんていうことを」
雅恵は、携帯を耳に当てながら出窓に立った。
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「そういい子だ。出窓のレースのカーテンを引いて奥様の姿をもっとよく見せてくれないかな」
言われるままにカーテンを開け放つと明るい陽射しがいっぺんに入り込んで雅恵は眩しさに目がくらんだ。
徐々に目が慣れて庭の先の道路に滝山の車が止まっているのがわかった。車内が外のより暗いため中の滝山の姿を認めることができなかった。
車の中から滝山は、雅恵の姿を見ていた。大きな出窓から雅恵の腰のあたりから上が見える。今日は、トレーナーとカーキ色のだぶだぶのパンツを履いている。
「携帯をスピーカーモードに切り変えて」
携帯の“スピーカー”と書いてあるボタンを押す。