The change!〜少女の願望編〜-1
「はぁ……またやっちゃった……」
幸田ひとみはヌルリとした白っぽい愛液のからんだ指を見つめた。
二階の自室、深夜二時。
家族は皆寝静まって、この家で活動しているのは自分一人。
その時間を見計らってはこうして淫らな自慰行為に及んでいる。
家族を起こさないよう声を噛み殺して。
そうでもしないと身体の疼きが治まらないのだ。
「女の子の自慰なんて」と世間には言われそうだが、十七才の思春期に男子にしか性欲がない、と思われているということ自体がおかしいと思っている。
こんな風に欲望を感じ、自分から求めようとする自分を珍しいタイプ、とは思っても。
いつからだろう?こんなことを始めたのは。
彼……山下望(のぞむ)に出会ってから生活が多少かわった。
背も、女子の標準の私と大して変わりはない彼を、初めはおっとりとしたただのクラスメートだと思っていた。
けど今では、背が高くてちょっと顔がいいだけのバカより何倍も何倍も魅力を感じている。
溢れんばかりの優しさとか、そんなところに。
ただ一つ、「セックスの時に感じちゃうポイントを微妙に外している」ということを除けば!
「あ……っは……んぅ……」
一呼吸置いて、指をまた自身の秘部へとすべりこませる。
グチュ、と濡れた音が耳に届き、そのまま二関節分進めた上側のコリっとしたポイントを貪った。
ピアノ1オクターブ分も届かない指は確かな快楽を自身にもたらすけど、
「はっん、んぅ……んー!」
絶頂へと導く事はできない。
「あ…っ!」
指の感触になれて快感があまり無くなった。ズルリ……と二本の指を引き抜く。
液に濡れて皺の寄った指をティッシュで丁寧に清めた。
こんな時、いつも思う。
私が男だったらもっと彼女をよくしてあげられるのに――と。
***
「はぁ!?性転換薬〜?」
教室に、「胡散臭い」を存分に滲ませたひとみの声が響いた。
その情報をもたらした友人、朋美の顔をマジマジと見つめる。
もし本物なら嬉しき事限り無しだが……昨日の今日でそんな話がくるなんて出来すぎだ。漫画だ、アニメだ、小説だ。
「そ。嘘みたいだけど現実〜vV」
だが、当の本人はあっけらからんとそう口にした。
「夢じゃないよ〜?」と顔を引っ張ろうとしてくる手を払い落として続きを促す。
「んとね、私の叔父は製薬関係の研究者でね、人のホルモンに作用する薬を作ってたの。ところがある時手違いから変なものが出来ちゃってねぇ……マウスに与えてみたところ、なーんと条件付きで性転換できる薬ができちゃったのさvV」
「ふ、ふーん……ι」
失敗作を平気でマウスに試しちゃう辺りマッドな気もしなくはなかったが……話としては大変魅力的だった。
「条件って?」
「食いつきがいいなぁひとみちゃん♪それはね、一番ホルモンが活発な昼間の時間帯だけって事なの♪で、外性器はもちろん中も見た目もすぅっかり変わっちゃうんだって。ね、試してみない?叔父が実験してみたいって言っててさ〜」
「……」
私はすぐには答えられなかった。
だって……恐くない?そんな薬……。
「治検バイトだからもちろん有毒性はないよ!日が落ちたら戻っちゃうのも確認されてるし!ね、バイトだからお金も払われるからぁ〜二万くらい?」
チャリーン!!
頭のなかにレジが開いた時のような音が響いた。
ホテル代は割勘とはいえ高いんである。
二万の誘いはあまりに甘美だった。
「朋美……」
声がふるふると震える。
喜びで。
「喜んで協力させて頂戴!!(これで望を……!)」
「きゃっ!ありがとう!(これで私が実験台にならずに済んだわ…)」
少女達は互いの思惑を胸に、しっかりと手を握りあったのだった。